#43 初期の顧客開拓で何を考え、どう行動したか
2022年5月4日に娘が生まれました。母子ともに健康です。おめでとうございます。
今回は当社がBtoBマーケティングのコンサルティング事業に参入した際、後発としてどのように顧客開拓していったのかを解説します。
まだまだ小規模な会社で今後もどれぐらい成長するかは不明なので、「成功事例」ではなく「後発での市場参入における、顧客開拓の事例」としてご覧いただければ幸いです。
1.知人と知人からの紹介で案件獲得(2017年10月~2018年4月ぐらい)
株式会社才流(サイル)は2016年7月に設立した会社だ。創業期は企業とフリーランスのマッチングサイトを運営していたが、あまりうまく行かずに2017年10月ぐらいには撤退。
その後、次にやる事業を探す期間が必要だったが、幸い前職時代のお客様や知り合いから自分1人が食べていける程度には仕事の相談をいただいていた。
この頃は、事業の内容が定まっていなかったため、BtoBマーケティングだけでなく、SEOやサイトのUI改善のコンサルティング、新規事業開発の支援などの依頼も受けていた。
2.オウンドメディアの立ち上げ(2018年4月~現在まで)
その後、『#38 僕たちのPMFの話をしようか。才流編』に書いた通り、SaaS市場の隆盛をきっかけにBtoBマーケティング市場が拡大するのではないか、という仮説を持ち、BtoBマーケティングのコンサルティング事業に参入することを決意。
事業を伸ばすために顧客開拓の方法を検討したが、前職時代に成功体験があった“コンテンツマーケティング”を主軸にしようと考え、オウンドメディア『SAIRU NOTE』を立ち上げた。
※成功体験の詳細は『#42 コンテンツマーケティングの再現性と可能性』にも記載
“コンテンツマーケティング”を選んだ背景には、前職時代に経験した
テレアポ経由の商談の効率の悪さ
テレアポなどのアウトバウンド施策の精神的負荷の高さ
名指しの依頼ではなく、他社と比較検討され、コンペになったときの営業コストの甚大さ
自分が寝ている間に営業してくれる、コンテンツのストック性の高さ
などもあるが、「コンテンツ作成が好き」という理由が一番大きい。どうせ長期間やるなら、好きな施策を選んだ方が成果が出るような気がした。
オウンドメディア『SAIRU NOTE』を立ち上げる際、最も頭を悩ませたのは「集客経路」だ。
検索エンジンやSNSなどから「橋」がかかっていなければ、せっかく良いコンテンツを作っても誰にも読んでもらえない。
※このあたりの考えは「無人島でお祭り」にしない。コンテンツに橋をかける重要性 で解説
しかし、検索エンジン経由で集客経路を作ろうにも、一般的にドメイン年齢が浅いサイトでは検索結果で上位表示されるまでに時間がかかる傾向がある。当時、当社のドメイン年齢は2年未満だった。
加えて、マーケティング領域では競合他社や個人ブログが大量のコンテンツを投下している。検索結果を眺める限り、後発で勝っていくのは大変そうだった。
次にSNS経由での集客を考えたが、Facebookは1,000名以上の友達がいたもののTwitterのフォロワー数は500人弱。私のSNS単体では、定常的に集客が見込めるチャネルにはならそうだった。
この時に考えたのが、自分のFacebookの友達数は1,000名程度だが、自分と同じぐらいの友達数がいる各領域の専門家10名にコンテンツを書いてもらえば、1,000名×10名で10,000名程度にコンテンツを届けることができる。コンテンツが彼らの友達にシェアされ、友達の友達までリーチできれば結構な人数になりそうだな、ということ。
いきなり検索エンジンで上位表示されたり、SNSでバズり続けるのは難しいから、まずは自分の友達に届けるのが第一歩。しかし、それだとリーチ数に限界があるため、自分以外の人にもコンテンツを書いてもらって、より多くの人たちにコンテンツを届けよう、という作戦だった。
結果としてこの作戦はうまくいき、早期に多くの人たちにコンテンツを届けることができた。
また、オウンドメディア開始当初はBtoBマーケティング以外のテーマ(組織、採用、新規事業など)のコンテンツも発信していたが、半年後ぐらいに「BtoBマーケティング」のみに絞ることを決断。発信テーマを絞ったことで「才流=BtoBマーケティング」の認知獲得に寄与した実感があった。
3.Twitterでの情報発信(2018年4月~現在まで)
オウンドメディアの立ち上げとほぼ同時に取り組んだのがTwitterでの情報発信だ。
いまでこそTwitterで2.7万人程度の方にフォローいただいているが、当時は友達関係のみでTwitterを使い、フォローは500人弱だった。
Twitterを強化しようと思った理由は、コンテンツの集客経路を作りたかったことに加え、オウンドメディア以外の情報発信の場を作りたかったことが大きい。
前述の通り、マーケティング領域では競合他社や個人ブログが大量のコンテンツを投下している。「BtoBマーケティングに関するオウンドメディア」だけではポジショニングとして弱く、埋もれてしまう可能性を感じた。
しかし、BtoBマーケティングの支援会社は当時から多数存在していたため、オウンドメディア以外のチャネル(検索エンジン、セミナー、書籍、展示会での講演など)には先人が存在する状態だった。
競争が少ないチャネルがないかを探していた際、ちょうどTwitterがビジネス活用が増えていたタイミングで目に止まった。調べてみるとTwitterでBtoBマーケティングの情報を発信している先人がおらず、完全なホワイトスペースだった。
個人的な感覚としても、日々の生活の中で“スマホを開いて、SNSを見る”時間が圧倒的に増えていたため、「SNS上で見つけてもらえるか」は今後、重要になりそうだなと思い、Twitterでの情報発信を始めた。
軌道に乗るまでには様々な試行錯誤があったが、途中から「BtoBマーケティングのノウハウをつぶやくBot」と化したことで多くの方にフォロワーいただけるようになった。
4. 他チャネルへの展開(2019年4月ぐらい~現在まで)
オウンドメディアやTwitterでのコンテンツ発信が軌道に乗った後は、共催セミナー、イベント登壇、業界メディアへの寄稿、書籍、カンファレンスなどのチャネルにコンテンツを出していった。
この時にイメージしていたのは2014年頃に一世を風靡したYouTuberでAppBank社長のマックスむらいさんの動画。
動画の13:09ぐらいから、発信するチャネルを増やしても意外にユーザー層が被らない話が展開されている。発言を引用しよう。
生放送っていうのは私達が元々ブログの世界で付き合っていたユーザーコミュニティと全然違うところにコミュニティがあったんすよ。
ブログってのがあって。Twitterみたいな。まぁ色々あると思うんですけど意外と被ってないすよね!
AppBankがブログです。私がTwitterで情報発信をしたときにAppBankを見てる人とどれぐらい被っているかというと意外と被ってないすよね。
で、それで言うと、生放送、意外と被ってないんすよ。YouTubeっていうのはこれくらい被ってないんすよ、ニコニコとYouTubeって!
だからAppBankはここで元々ビジネスをやってたんですけど、私がニコニコをやるとそのまんま単純に倍みたいな感じで。更にYouTubeに手を出したら、更に倍みたいな感じで。ウチが接点を持てるユーザーが倍々ゲームのように増えていったんすよ。
実は、マックスむらいさんは前職が一緒で、iPhone発売以降のスマホシフトの波を乗りこなしながら爆速で上場まで行く姿を横目で見させていただいた経験がある。
このホワイトボードの右側の図を頭にイメージながら、オウンドメディアとTwitterに加えて、セミナー、業界メディア、書籍、カンファレンスと露出するチャネルを増やしていった。
正確に数えたことはないが、この頃から3年間でセミナー登壇は100回以上、業界メディアへの寄稿も30回以上しているはずで、書籍も3冊出している。
オウンドメディアやTwitterでの発信実績があったことで、他チャネルへの横展開もスムーズに行き、ある段階からは当社からの積極的な働きかけをせずとも、イベント登壇や共催セミナーなどのお誘いをいただける状態になり、プロモーション活動が離陸した感触があった。
初期フェーズは「絞る」ことが大切
まとめるとBtoBマーケティングのコンサルティング事業における顧客開拓は
知人と知人からの紹介で案件獲得(2017年10月~2018年4月ぐらい)
オウンドメディアの立ち上げ(2018年4月~現在まで)
Twitterでの情報発信(2018年4月~現在まで)
他チャネルへの展開(2019年4月ぐらい~現在まで)
という変遷をたどった。現時点では広告費ゼロで年間900件前後のお問い合わせ・資料請求をいただいている。「自分たちが目指した成果は達成できている」という意味での成功要因は
発信するテーマを「BtoBマーケティング」に絞ったこと
当時「Twitter」がホワイトスペースだったこと
情報発信のチャネルを「Twitter」、「オウンドメディア」に絞ったこと
その後、情報発信のチャネルを拡げたこと
2018年4月以降、コンテンツ発信が停滞することなく、継続できていること
あたりだろうか。
全体を通じて感じるのは「絞る」ことの重要性だ。
先日、運用型TV CMで有名なノバセルの田部社長とセミナーでご一緒した際、ノバセルも初期は「スタートアップ」×「はじめてのテレビCM」に絞って顧客開拓をしたと発言されていた。
事業戦略のセオリーに「まずは狭くても良いからカテゴリーのNo.1になる。次により広いカテゴリーに攻める」があるが、「絞る」は事業戦略やマーケティング戦略において再現性高く使える意思決定の切り口だろう。
大型調達に成功したスタートアップや社長肝いりの新規事業でリソースがよほど豊富にある場合を除き、初期から戦線を拡大するとどれも中途半端になり、どこにも風穴が開かずに終わってしまう。ターゲットにしろ、提供サービスにしろ、プロモーション施策にしろ、まずは「絞る」ことを前提に初期の顧客開拓戦略を立案すべきだ。
そして、「絞る」だけではどこかのタイミングで売上/利益の限界に達する。順次、戦線を拡大して、ターゲットや提供サービス、プロモーション施策を増やしていく必要があるだろう。
絞る
成果を出す
順次、戦線を拡大する
の3ステップは新規事業の顧客開拓をする際に今後も使えそうなので忘れないために書き記しておく。
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