#2 苦肉の策から生まれたドン・キホーテの必勝パターン。「安売り王一代」
私は年間200冊程度の本を読むのですが、Twitterでは感想や引用したい箇所が140文字に全く収まらないため、面白い本があっても紹介しづらい・・という課題を感じていました。
ニュースレター「Twitterでは言えない話」は文字数制限がないため、大量に読んだ中で、特に面白かった本を紹介していきます。
記念すべき1冊目は、2021年時点で年商7,000億円以上を誇るドン・キホーテの創業者 安田隆夫さんの本『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』です。
1. 印象に残ったこと
ドン・キホーテといえば、あの独特な商品陳列とPOPでの商品紹介、深夜営業などが特徴ですが
圧縮陳列は、最初の店が狭く、仕入れた商品を置く場所がなかったため、店内に高く積み上げていたら、その方が受けが良かったのではじめた
POP洪水による商品紹介は、箱を積み上げるだけでは中身がわからないので、中身を紹介するために生まれた
深夜営業は、最初の店を1名で切り盛りしていたため、深夜まで仕事が終わらず、シャッターを上げて作業してたら『まだやってますか?』と客が入ってきて、お酒も入ってるせいかよく買ってくれたことで、ナイトマーケットの存在に気づいた
とのことで、めちゃくちゃ面白いなと思いました。
あの独特な店舗や販売方法は事前に計画されたものではなく、商売を営む中での苦肉の策から顧客のインサイトを掴み、勝ちパターンとしていったのがリアルだなと。
創業者の安田隆夫さんは慶應義塾大学を卒業後、小さな不動産会社に就職するも入社10ヶ月後にその会社が倒産。麻雀で食いつないでいたが、自堕落な生活にピリオドを打とうと決心し、ディスカウントストアを立ち上げた、という創業エピソードにも起業のリアル感を感じました。
2. 抜粋箇所とコメント
私はドン・キホーテ一号店の時代から、商品の仕入れ、陳列、販売等にいたるまで、店の業務はすべて部下に権限移譲し、いっさい口を出さなかった。(中略)私自身は店舗開発とか財務戦略など、「これだけは経営者がやらなければならない」という中核業務だけに集中することができた。
→会社の成長に最も効果が上がる「中核業務」に経営者は集中する必要がある。
では何を売ればいいのか?ああでもないこうでもないと悩んでいたある日、私はふらりと入ってみた何軒かのディスカウントストアで、「これだ!」と思った。その頃、ディスカウントストアは、各地にぽつぽつと登場し始めていた新手の業態で、当時は主に「質流れ品」を売っていた。なぜかどこの店に行っても、決まって店主は、入ってきたお客をジロリと一瞥するだけで、声さえかけて来ず、無愛想極まりない。だが、逆に私は自信を持った。「これで商売が成り立つなら、俺にもできそうだぞ」
→根拠なく「自分にもできそう」「他の人よりうまくやれそう」と思えることをやったときはだいたいうまくいく気がする。
お客さまのしぐやさ行動、心の動きなどを必死で観察し、そこに秘められたニーズを掘り起こし、結果としてお客さまが喜んでくださるような店づくりと品揃えに徹するより他になかった。
→顧客の解像度を高めるのが重要、という話でマーケティングそのもの。
悩みに悩んだ末、最終的に教えるのをやめた。あれほど教えてもダメなのだから、そもそも教えるという行為自体が無意味なのだ。(中略)「教える」のではなく、それと真逆のことをした。「自分でやらせた」のである。(中略)要は自ら考え、判断し、行動する「体験環境」を用意してやれば、従業員たちに“頭脳と創造性”がひとりでに育ってくるのである。
→機会さえあれば、従業員は自ら学ぶ、という話。ドン・キホーテでは、160の小さな事業単位を作り、現場の責任者に数字責任と権限を与える『個人商店主システム』を採用することで、「機会」を作っている。
私の信条は「攻めは他人がやらないことをアグレッシブに。しかし守りはベーシックに」だ。
→成功する経営者はケチだ、臆病だ、と言われたりするが、守りは常に大切。
私はバブル時代に一切、財テクや土地転がしなどの「攻め」に出なかった。(中略)一度でもバブルの甘い汁を吸ったらやめられないだろう。アル中の一杯、禁煙中の一本と同じだな・・・私は自分の意志の弱さもよく知っていた。
→アル中の一杯、禁煙中の一本と同じ、という表現が面白い。目先の利益は得られても、事業創出・運営を真面目にできない身体になってしまいそう。
人材育成とか教育といった“上から目線”の言葉が大嫌いだ。だいたい、「上司に育成されたい!」などと本気で思っている若者なんているわけがない。
→他には「評価」も近いか。顧客から評価されるならまだしも、上司から評価されたい若者なんていない、的な。
私の経験上、こうした一見もっともらしい理論が一番危ない。(中略)理路整然だから正しいということには、けっしてならない。そもそも人間の心理は理路整然とはしていない。いろんな矛盾をかかえながら生きているのが人間の様であって、それが生きている証でもある。
→ビジネスは「人」を相手にする以上、ロジックだけ動かせることって少ないですよね。
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