#26 勤勉さや実行力が大切そうだと思った話
来年から本格的に採用を進めるにあたり、社内で「才流(サイル)としての求める人物像はどんな人たちか?」という議論があった。
『#15 才流が目指す経営の弾み車』で紹介した通り、メソッドメーカー(ノウハウを暗黙知から形式知にできる人)であることが経営戦略上の第一条件だが、もう一つ、過去の採用活動(これはとてもうまくいっている!)で意識していたことがある。今日はその話を紹介したい。
映画『ファウンダー』での採用基準
マクドナルドの創業者であるレイ・クロックを取り上げた『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』という映画がある。
52歳までほとんど売れないミルクシェイクマシンを売る販売員だったレイ・クロックが、ある日、マクドナルド兄弟が運営する画期的なハンバーガー店に出会い、兄弟と交渉してフランチャイズ権を獲得。いまでは3万5,000店を超えるハンバーガーチェーンを運営する大企業を作るまでのエピソードを紹介した映画だ。
この映画の中で個人的に強く印象に残ったシーンがある。
それはフランチャイズ加盟店を増やし始めた初期の出来事。最初にフランチャイズ加盟店になってくれた資産家たちは酒やゴルフに興じるなど、お店の面倒を真面目に見ず、各店が好き勝手に運営されてしまい、全く上手くいかなかった。
レイ・クロックが新たな店長選びに頭を悩ませていたとき、会社に聖書を売る男が営業にやってくる。
レイが聖書売りの男に名前を尋ねると、彼は「ローゼンブラット」と答えた。
「ローゼンブラット」はユダヤ人の名前であり、ユダヤ人と言えば「勤勉な人たち」として知られていた。「ローゼンブラット」という名前に「勤勉さ」を見出したレイは、その彼をマクドナルドの新店長に据える決断をした。
結果、ローゼンブラットのお店はフランチャイズのルールが守られ、清潔で、極めてうまく運営されていた。
ある種、人種差別的な判断ではあるが、勤勉な人たちに店舗運営を任せてから、ビジネスがうまくいったところが印象的だった。
頭の良さよりも勤勉さや実行力
映画でこのシーンを観たときに『「勤勉な人たち」という基準はすごく良いな!』と思った。
過去10年程度の仕事人生を振り返って、大きな仕事の成果は頭の良さや優れたアイデア、プレゼンの上手さからではなく、勤勉さや実行から生まれる印象を持っていた。極めて頭が良く、アイデアを次々と出し、プレゼンは上手いけれども、その後の実行でつまづき、成果を出せない人をたくさん見るにつけ、「頭の良さ」みたいなものは(それだけでは)成果にほとんど関係ないのだろうな、という仮説があった。
例えば、昔、某社へのインバウンドマーケティング支援で大きな成果が出たときの話。数年後、某社の社長と話したときに「インバウンドマーケティングをやるなら、まずはブログを書かないとね!」と言っていて、正直、インバウンドマーケティングの定義からは若干間違っているのだが、その会社は圧倒的な実行力があり、大きな成果が出ていた。「論理的な正しさよりも実行力こそが成果を生むのか・・」と感じた出来事だった。
また、他の例として、私は茨城県で一番の進学校である中高一貫校に通っていたのだが、高校卒業時に一番頭が良かったのは中学1年生の入学時に一番の成績だった人ではなく、入学時はギリギリで合格したが中学入学後の6年間、毎日欠かさず1時間ずつ勉強していた人だった。
『ファウンダー』でレイ・クロックが勤勉そうなユダヤ人を採用するシーンを見てから、過去の気づきがつながり、採用時に「メソッドメーカーか」に加えて、「仕事に対して勤勉そうな人か」を意識して見るようになった。そして、この視点は今のところ間違ってなかったように思う。
おそらく、ビジョンに『メソッドカンパニー』を掲げ、業務のさまざまな面で当社が重視している“メソッド”(再現性のある正しい方法論)と、“勤勉さや実行力”の相性が極めて良いことが要因だろう。
もちろん、ある人の実行力は環境によって変わり、業務を進めやすい環境と進めにくい環境がある(例えば、ほとんどの人は兼務でマルチタスクな状態では実行力が落ちる)。会社としては、業務を進めやすい環境を整える必要があるだろう。
また、経営学者のピーター・ドラッカーの言葉『まったくするべきではないことを能率的にする。これほどむだなことはない』の通り、正しくない戦略を勤勉に実行しても、全速力で明後日の方向に進んでしまう。経営者としては、正しい戦略、正しい問いを立てる必要があるだろう。
仕事に対して勤勉そうな人を採用し、活躍できる環境を整える努力をしつつ、自分もFIREせずに勤勉にやっていきたい。
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