#29 経営者と社員の関係性
社内でのある会話の中で「栗原さんって社員の生活を守らないと、的な感覚はあるものですか?」という質問をもらった。
今回は上記の質問に回答しながら、経営者の役割とは、社員との関係性とは、などを深掘ってみたい。
社員の生活を守らないと、的な感覚の有無
まず私が「社員の生活を守らないと」的な感覚があるかどうかだが、感覚はあるものの思考の比重は別のところにあり、具体的には、
面白い仕事を提供しないと
パワハラ、モラハラ、セクハラ、ブラック労働など、心身に損害を与えてしまう事象が起きないようにしないと
市場平均以上の給与を払わないと
当社に在籍したことが、キャリアのプラスになるようにしないと
みたいなことを考えている。
転職が当たり前になっている現代、仕事がつまらなく、ブラックな環境で、微妙な給与しか払われず、キャリアのプラスにならない会社には、そもそも人が集まらないし、せっかく採用した人たちも爆速で辞めてしまうだろう。
前提として、経営者である私は、掲げているミッションやビジョンを実現したくて会社や事業をやっている。当然、自分1人の力はたかが知れているため、自分以外の人たちに力を貸してもらう必要があり、力を貸してくれる人を増やしたいと思っている。
にも関わらず、人が集まらない組織ではミッションやビジョンの実現がままならない。
仮に採用できたとしても、せっかく採用した人たちが爆速で辞めてしまう組織では、採用・オンボーディング・育成などのコストが無駄になるため、資本効率が悪くなるし、会社として出せる価値も積み上がっていかない。離職率が高い状態では、ミッションやビジョンの実現が遠のいてしまうだろう。
加えて、会社の観点だけでなく個人の観点でも、魅力的な組織を目指した方が良いと考えている。
Amazonの創業者、ジェフ・ベゾスが提唱している考えに『One-way doorとTwo-way door』がある。
One-way door:一度決めると簡単に戻せないもの
Two-way door:駄目だったとしても元に戻せるもの
ジェフ・ベゾスはOne-way doorの意思決定に関して、次のように説明している。
いくつかの意思決定はその結果が重大で、あとで修正したり、もとに戻すことができないものだ。つまり一方通行である。
このタイプの意思決定は念入りに、注意を払って、ゆっくりと行う必要があり、十分に考え、専門とする人からの意見を参考にすることが要求される。
というのも、一度行ってしまえば、その結果としての状況を見てこれはだめだと思っても、もうもとに戻ることはできないのである。
個人のキャリアは、典型的なOne-way doorの意思決定だ。才流(サイル)に入社したことがプラスにならなければ、その後のキャリアで“挽回”はできるかもしれないが、入社したことは“撤回”できない。
当社がMcKinseyやGoogle、P&Gのように世界最高レベルにブランド力がある会社であれば、入社後すぐに離職したとしてもキャリアに箔がつくかもしれないが、残念ながら、まだまだ無名に等しい。
One-way doorな個人のキャリアにおいて、当社に入社いただくことは社員の人生に重大な影響を及ぼす。粗末に扱っていては、才流の経営者である私に悪徳がたまり、将来、地獄に落ちてしまうだろう。
経営者と社員の関係は、ビジネスパートナー
ということで、冒頭の「栗原さんって社員の生活を守らないと、的な感覚はあるものですか?」という問いに対しては、「生活を守ることは前提として、市場の中で選ばれ続ける存在にならないと、的な感覚がある」が正直な答えだ。
年末年始に中日ドラゴンズの黄金期を作った落合監督に迫ったノンフィクション『嫌われた監督』を読んでいた中で、落合監督が「勝敗の責任は俺が取る。お前らは自分の仕事の責任を取れ」と選手に語る一節があった。これは会社の場合、
経営者:ミッション、ビジョンを実現するために会社を率い、会社としての成果を出すことに責任を持つ
社員:ミッション、ビジョンを実現するための実行を担い、個人としての成果を出すことに責任を持つ
と置き換えられる。
野球では「試合に勝つ」という目的に対して監督と選手の役割分担があるように、ビジネスでは「ミッション、ビジョンに基づく社会への価値提供」という目的に対して経営者と社員の役割分担がある。
「同じ目的に対して役割が違う」という意味では、経営者と社員の関係性は「ビジネスパートナー」と表現するのが一番しっくりきていて、社内のドキュメントでも以下のように『ビジネスパートナー』と明記している。
つまるところ、「ミッション、ビジョンに基づく社会への価値提供」という目的に対して経営者として担う役割と責任の中に「社員の生活を守る」要素もあるし、現代においては「面白い仕事があり、心理的に安心して働ける環境で、市場平均以上の給与が払われ、キャリアのプラスになる会社にする」要素も入ってくるのだと理解している。
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