経営の成功・失敗 #3:クライアントワークの品質向上
株式会社才流(サイル)を経営しながら学んだことを、「経営の成功」「経営の失敗」という切り口で振り返る連載。第3回は「経営の成功」について、クライアントワークの品質向上の取り組みを紹介します。
なぜ高い品質を目指したのか
なぜ当社がクライアントワークにおいて、高い品質を目指してきたのか。それは、顧客への価値提供こそが経営の一丁目一番地だからだ。
個人的な解釈だが、「株式会社」の構造は極めてシンプル。
顧客に価値を提供する
↓
対価としてお金をいただく
↓
給与支払い・投資・納税・株主還元などができる
この起点である「顧客への価値提供」が崩れると、すべてが崩れる。従業員への給与も払えず、未来への投資もできず、ましてや納税・株主還元など望めない。だからこそ、価値を磨き続けるための取り組みを創業以来、継続してきた。
品質追求の結果
現在、当社の事例ページには100件以上のお客さまインタビューが掲載されており、一定のご評価をいただいている。まだまだ改善すべき点は山ほどあるが、プロジェクトごとに実施しているNPS(顧客推奨度)調査も自社が達成したい水準に達している。
成功につながった取り組み
インパクトが大きかったと感じているものを、上から順に挙げる。
1.採用 >> 育成
「未経験者を育てて価値を出せるようにする」ではなく、「最初から価値を出せる人材を採用する」。明確に採用へ振り切った意思決定・リソース配分は功を奏した。
具体的には「最初から価値を出せる人材を採用する」ために業界平均以上の給与を支払うこと。そのために高単価・高付加価値を実現できる市場やカテゴリーを選ぶことなどを行ってきた。
2.経験者に、経験のあることをやってもらう
新卒や未経験中途ではなく、経験豊富な中途を採用している。
当社では主に、マーケティング・セールス・新規事業領域の支援を中心に行っており、支援内容に応じて各領域で経験を積んだコンサルタントをアサインしている。
人は、はじめてのことより何度もやったことの方がうまくできる。外食にお金を払うなら、料理をはじめて作った人ではなく、10年間、料理人として修行した人の料理を食べたいはずだ。
3.事業会社出身者を中心に採用
当社のコンサルタントは、事業会社出身者が約90%を占める。コンサルティング会社としては珍しい比率だと思う。
「経験者に、経験のあることをやってもらう」に近いが、実際に現場でマーケティング・セールス・新規事業をやったことがある人間は、現場の泥臭い苦労や「ラストワンマイル」の難所を知っているからこその解像度の高い支援ができる。
4.「型」への投資
創業以来、納品資料のテンプレート、支援プロセス、各種フォーマットなど、再現性高く価値を提供するための「型」に投資し続けている。
その一部は当社のWebサイトや書籍で公開しているが、非公開の「型」も社内に存在し、コンサルタントがクライアントワークに活用している。
5.顧客アンケート
プロジェクト開始後3週間目と、終了後10日目の2回、顧客アンケートを取得している。顧客から直接フィードバックいただくことで、どこを改善すべきかが具体的に見えてくる。
6.サブコンサルタントのアサイン
プロジェクトには必ず2名以上のコンサルタントをアサインしている。メインコンサルタントにとって、壁打ち相手やフィードバックをくれる存在がいることは、品質のセーフティネットになる。
(将来的にはAIがサブコンサルタント的な役割を担うようになるかもしれないが……)
7.社内相談の仕組みづくり
弊社のコミュニケーションツールはSlackだが、Slackには全員が参加する相談チャンネルがある。週次定例でも、コンサルタントが集まり各プロジェクトに関するアイデア出しを行っている。1人の悩みを全員で解決する仕組みだ。「三人寄れば文殊の知恵」を組織的に機能させている。
8.インプット機会の確保
月1回程度、外部講師による社内勉強会を実施。最新トレンドや事例をキャッチアップし、顧客へ還元できる状態をキープしている。
9.休息
休まなければ回復しない。コンディションが悪ければ、ベストな提案はできない。
繁忙期やプロジェクトの事情などの例外もあるが、相対的には残業が少ないコンサルティング会社になっている。
経験豊富な中途の採用、「型」への投資なども功を奏して、生産性高く業務に取り組めていると自負している。
今後取り組みたいこと
伸びしろはまだまだあるので、さらなる品質向上のために、今後は以下の3点に取り組んでいきたい。
社内フィードバックの仕組み
顧客アンケートによるフィードバックはあるが、同僚からの(評価ではなく)フィードバックも必要であると考える。
私は長年テニスをしているが、コーチからのフィードバックなくして上達はない。クライアントワークに置き換えても、フィードバックなくして上達はないだろう。上達は顧客価値の向上につながるため、今年こそ実装したい。
研究開発(R&D)投資の加速
コンサルティング会社にとっての研究開発とは、独自の調査データの取得やフレームワーク開発、新領域の事例集積などだ。現在も取り組んではいるが、「理想の1%」程度しか実現できていないと感じている。
社会や顧客への提供価値を高めるために、今年こそは研究開発投資を加速させたい。
ナレッジマネジメントの体系化
『4.「型」への投資』で紹介したとおり、すでに相当量のナレッジを社内に蓄積しているが、理想まではあと一歩、二歩足りない。
某大手ファームでは社内のナレッジマネジメントシステムが機能しており、評価にも紐づいていると聞く。完璧は難しくとも、個人の経験を組織の資産へ変える仕組みを完成に近づけたい。




