#39 長期では「野心」が成功のシグナル
最近、AngelListの創業者で投資家のNaval Ravikantについて書かれた『The Almanack of Naval Ravikant』を読んでいて、“この人は優秀だなーと思った人は、いつかはわからないが、その後、例外なく大成功を収めている”という記述(※1)があった。
これは肯くことが多く、例えば、前職で少しだけプロジェクトでご一緒したことがあるセレブリックスの北川さん。セレブリックス社は営業代行・コンサルティング領域のリーディングカンパニーで、いまや従業員数1,000名を超える会社だが、北川さんが2022年4月1日付けで株式会社セレブリックスの代表取締役社長に就任されていた。北川さんは昔からモノが違う感があったので驚くと同時に納得したニュースだった。
※出典:【株式会社セレブリックス】代表取締役社長交代のお知らせ
また、株式会社LITALICOの代表取締役社長・長谷川さん。前職のインターンで一瞬被ったのだが、当時からモノが違う感があった。2022年4月1日付けでスタディサプリの生みの親でリクルートマーケティングパートナーズの元社長の山口文洋氏を副社長に迎えたリリースを出していて、長谷川さんの変わらぬスケールの大きさを感じたが、いまや東証一部上場企業の社長である。
※出典:代表取締役副社長候補者の選任に関するお知らせ
他にも以前、過去に名刺交換をして印象に残った人のことをググって、いま何をやっているかを調べたことがあった(暇か)。結果は、ことごとく社長になっていたり、会社を成長させていたり、他社で幹部として出世されていた。仕事できる人は仕事できるんだなーと思った記憶がある。
この“モノが違う感”が何から来ているかというと、営業力とか調整力の高さとか提案のキレなどのスキルベースの話ではなく、その人の言動の節々から感じる野心の大きさ、視座の高さのようなものであり、そこから生まれる仕事に対する規律、意識の高さであるように思う。
数年前に『視座の高さが成果を決める。らいおんマインドの話』という記事で、視座の高さが違うと、そこから生まれる日々の思考、行動、判断が変わり、結果として、どんな成果が手に入るか規定されるよねー、という話を書いたが、視座が高い人が成功しやすいメカニズムを図にするとこんなイメージだろう。
視座①になっていると視座②よりも高い行動規範が生まれ、潜在能力が発揮されやすくなり、より少ない労力で②の成果が手に入る。逆に②のまま、①の成果が手に入ることはない、という話。
上記の記事でも引用したが、著名な理論物理学者、アルバート・ラズロ・バラバシが書いた『ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」』の中に面白い研究が紹介されている。
ふたりの経済学者が最も意外な結論に行き着いたのは、アイビーリーグの大学に落ちた学生について調べていた時だった。
SATの点数やGPAなど、その学生のあらゆるパフォーマンス基準を調べたところ、卒業一〇年後の年収を決める重要な要素は、その学生が通った大学の名前ではなかった。長期にわたる成功を決める唯一の要因は、たとえ合格しなかったにしろ、その生徒が出願した最難関大学にあった。
もっと具体的に説明しよう。ある生徒がハーバード大学に願書を出したが落ちて、ノースイースタン大学に入学したとする。その学生の将来の成功は、SATの点数や高校時代の成績が同レベルにあった、ハーバード大学の学生の成功に何ら劣らなかったのである。言い換えれば、あなたの子どもの成功を決めるのは、「パフォーマンス」と「野心」――自分がどこに属していると自分で思うか――なのだ。
要は、ある時点での「パフォーマンス」よりも、長期では「野心」が成功のシグナルになるという話。
昨年、前職の同期たちが立ち上げた株式会社フォトシンス(スマートロックのAkerunを提供する会社)が上場した。
新卒入社の当時から、代表の河瀬くんは世界を驚かせるようなプロダクトを作りたいという野心を抱いていて、その野心が彼に週末プロジェクトでAkerunというプロダクトを作らせ、累計約70億円の資金調達を可能にさせ、上場まで導いたのだろう(これからも頑張ってほしい!)。
そして、野心があり、視座の高い人たちが成功しやすいことを時間軸のあるプロセスで捉えると下図のようになると考えている。
最初は「カオス」と言えるような荒削りな時期があるが、行動によって様々なフィードバックがかかることで、新しい知識を獲得。徐々に思考、行動、判断の精度が高まり、成功が手に入るイメージだ。
言うまでもなく、野心や視座が高いと「カオス期」に途中で諦めることがないし、フィードバックから得られる知識の習得にも貪欲になるし、「収束期」でもさらに努力を投下できる。冒頭の“この人は優秀だなーと思った人は、いつかはわからないが、その後、例外なく大成功を収めている”というNaval Ravikantの観察結果も頷けるだろう。
以上、2022年4月1日付けのリリースを見て、長期では「野心」が成功のシグナルになるなと思った話を書いてみた。
(※1)該当箇所の原文を引用
One thing I figured out later in life is generally (at least in the tech business in Silicon Valley), great people have great outcomes. You just have to be patient. Every person I met at the beginning of my career twenty years ago, where I looked at them and said, “Wow, that guy or gal is super capable—so smart and dedicated”…all of them, almost without exception, became extremely successful. You just had to give them a long enough timescale. It never happens in the timescale you want, or they want, but it does happen.
後年になってわかったことは、一般的に(少なくともシリコンバレーのテックビジネスでは)、優れた人材は優れた結果を生むということです。ただ、忍耐強くあることが必要なのです。20年前、キャリアをスタートさせたばかりのころに出会った人たちを見て、「わあ、あの人はすごく優秀。頭が良くて、熱心だなあ」と思ったものです...ほとんど例外なく、全員が大成功を収めました。ただ、彼らに十分な時間的余裕を与える必要があったのです。あなたが望むような、あるいは彼らが望むような時間軸では決して起こらないのですが、それは起こるのです。
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