支援ビジネスはどこで戦い、どこを避けるべきか

私は前職も含めると10年以上、営業やマーケティング、新規事業などの「支援ビジネス」をやっていて、この領域については多少なりとも知見がある。
最近、AI導入支援会社の立ち上げや営業・マーケティングの相談を受ける機会が増えていて、その際に私が回答していることを「支援ビジネス市場に対する解釈」としてまとめてみた。
1. 本丸のエンタープライズ市場は「修羅の道」
支援ビジネスが大きくスケールする場所は、結局のところエンタープライズ(大手企業)向けしかない。しかし、多くの場合、そこはすでに強者たちがひしめいている。
エンタープライズ×AIの市場を調査したわけではないが、おそらく次のような錚々たる顔ぶれと正面から戦い、勝ち抜く必要がある。
大手SIer
既存の大手戦略・総合コンサル、ベイカレント系コンサル
PKSHA Technology、エクサウィザーズといったAI専業の上場企業
東大松尾研出身者が経営陣に名を連ねる、資本力とブランドがあるスタートアップ
早々にAIシフトを完遂した、ギブリーのような機動力のあるベンチャー
正直に言って、ここに後発で割って入るのは相当に難しい。「松尾研出身」のような強いブランドエクイティがないのであれば、多くの企業にとって過酷な戦いになる。別の道を模索するのが賢明だろう。
2. 「バーティカル」の旅に出る
エンタープライズ以外でスケールする道に、良い「バーティカル(特定の業界・業種)」を見つけるという選択肢がある。
広告運用代行ならD2C、人材紹介なら急成長スタートアップが顧客セグメントとして圧倒的に魅力的なように、特定の業界や業種に特化することで、ブランド力がなくてもポジションを築ける可能性がある。
これから参入したところで良いバーティカルが見つかる確証はない。しかし、強い武器を持たない新参者にとっては、良いバーティカルを見つける「旅」に出るのは一つの選択肢だ。
当社の過去のお客様でも、システム開発受託をやっていた会社がさまざまな案件を受けるなかで顧客の共通した課題を発見。その課題を解決するSaaSを作ったところ、5,000社以上に有料導入されるまでに成長していた。
3. 近づいてはいけない「蜃気楼」
多くの人が「チャンスがありそうだ」と口にし、近づこうとするが、実際には成功しにくい市場が存在する。
大手のグループ会社や大手のBtoB企業だ。それは、多くの旅人が目にする蜃気楼であり、近づこうとしてはいけない。予算がありそうに見え、競合が参入していない空白地帯に見える。しかし、対象社数の少なさや到達難易度の高さから、多くの事業家がスケールする前に力尽きてしまう。
4. スタートアップと小規模企業市場の罠
スタートアップ向けはどうだろう。情報感度が高く、意思決定のスピードが速く、初期の顧客にはなってくれそうだ。しかし、スタートアップは事業の浮き沈みが激しく、一流スタートアップでない限りは支払い余力も少ない。取引になったとしても、要求水準は極めて高い。その上、スタートアップは最終的に「内製化」を志向するため、支援ビジネスとの相性は本質的に悪い。
スタートアップでないにしても、年商5億円未満の小規模企業向けはどうだろう。この市場の難点は解約率が高いことだ。たとえば、いまだとClaudeのSkillsの運用・保守を支援すれば多少は下がるかもしれないが、それでも小規模企業特有の業績の不安定さには抗えず解約率は高くなると予想する。解約率が高い顧客セグメントではLTV(顧客生涯価値)が高くならないため、事業として成立させるのは至難の業だ。
5. 「内製化したい」という言葉の真実
見込み客が口にする「内製化したい」という言葉は、喫煙者の「禁煙したい」と同義と捉えるべきだ。
最後まで本気でやり切れる人は稀である。大半の人の本音は「(面倒なことは)誰かにやってほしい」であり、「内製化」という市場自体が小さい。
6. コツコツと手堅く「年商5億〜の中小・中堅企業」
時間はかかるが、最も成功事例が多い選択肢は「年商5億円〜の中小・中堅企業の地道な開拓」である。
タナベコンサルティング 、船井総研、ユナイトアンドグロウなどの上場している支援会社が存在するのも、この市場である。
結局は「どうなりたいか」「何をやりたいか」で決めるべき
とはいえ、結局のところ、どこで戦うかは「どうなりたいか」「何をやりたいか」という個人の主観に身を委ねるのが良いと思う。
経営者や経営チームがやる気が出ないことをやっても、比較優位のある価値提供はできないからだ。 自分がどの市場で、どのような価値を、どのような方法で届けたいのか。最後はそこに行き着くのだと思う。著名な経営学者である楠木建先生の言葉を借りれば『好きなようにしてください』が答えである。


