祈ったら負け
先日、知人との会話で『昔の上司の教えで、いまも役立っているものはあるか?』という話になった。
私はタイトルの「祈ったら負け」を紹介したが、今回はこの言葉の意味や役立った理由などを紹介したい。
「祈ったら負け」の意味
新卒で入社した会社で上司から言われた言葉で
この案件、受注したら良いなー
今月、売上目標を達成したら良いなー
新規事業が立ち上がったら良いなー
Aさんに任せて、プロジェクトがうまくいったら良いなー
のように「◯◯したら良いなー」と考えてはダメだ、と。
仕事の結果はできるだけ自分でコントロールすべきで、「◯◯したら良いなー」と祈るのは神頼みと一緒でただの運任せ。祈ったときは、だいたいその案件は失注するし、売上目標は達成しないし、新規事業は立ち上がらないし、誰かに任せたプロジェクトも失敗する。
そうではなく
この案件の受注確率が上がるように先方担当者と一度電話しよう
売上目標の達成に向けて、来週のアポ数を増やしておこう
新規事業の立ち上げの確度が上がるようにBさんにアドバイスをもらっておこう
Aさんに任せるだけでなく、進捗確認も行おう
などと、仕事の結果をコントロールできるように最善を尽くせ、という教えだった。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があるが、人事を尽くさず、天命に委ねてしまっている状態を「祈ったら負け」と表現していたのだ。
まだまだ祈ってばかりの私だが、この言葉を聞いてから以前よりも1歩、2歩、成果に踏み込んだ仕事ができるようになった。
祈らないために
祈ることなく成果を出すためにはいくつかのコツがある。5つほど紹介しよう。
1.過達になるように計画する
与えられた目標値から逆算して行動を計画するのではなく、目標を超える数値から逆算して行動を計画する。
例えば、売上目標達成のために月40件の商談が必要であれば、月50件の商談が取れるように施策を打っておく。
結果として、余裕を持って目標達成ができるし、不測の事態があったときでも目標達成を死守できる。
2.ワーストケースを想定する
計画や予測の段階で最悪のケースを想定しておく。
例えば、2年で累積黒字化まで持っていく計画の新規事業があった場合、2年では累積黒字どころか単月黒字化までも行かないのではないか? そうなるとしたら、どんなシナリオが考えられるのか? 最悪のシナリオを回避するために今からできることはないか?と考えていく。
先憂後楽の精神で、計画や予測の段階で脳に汗をかいてしまい、実行段階での苦労を最小化する考え方だ。
3.考えられる手をすべて打つ
すべての打ち手をやり切ることも有効だ。
効果100の施策
効果20の施策
効果1の施策
があったときに、ほとんどの人は効率を求め、効果100の施策ばかりをやりがちだ。
しかし、「祈ったら負け」の精神に基づくと効果100の施策だけでなく、効果20の施策も効果1の施策もやった方が良い。
仮に効果100の施策がすべった場合、効果20の施策や効果1の施策をやっていないと手遅れになるし、全部やり切る中で効果20の施策を効果50の施策にする方法が思いついたりする。
すべての打ち手をやり切った方が、安定して成果を出せるのだ。
現実的には“リソース”という制約条件はあるが、重要なプロジェクトやプロジェクトの立ち上げ期では、考えられる手はすべて打つようにしたい。
4.自己評価ではなく、他己評価を起点に考える
ほとんどの人は他人に厳しく、自分に甘い。そのため、自己評価で仕事をしていると易きに流れてしまい、自分なら大丈夫だろう、これぐらいで及第点だろう、と祈りがちになる。
自分に甘くなるのは、ある種、人間の性(さが)で完全に避けるのは難しい。解決方法は、仕事を自己評価ではなく、自分以外の他者評価を起点に考えることだ。
例えば、『いやー、良いWebサイトを納品したなー』と思うだけでなく、クライアントに満足度アンケートを取ってみる。
もしくは、毎年30%成長している事業があったときに『すごく伸びてる!』『うまく事業運営できてる!』と思ってしまうが
業界トップ企業の年間成長率と比べる
業界における自分たちのシェアを計算する
社内の他事業の成長率と比べる
と、甘くなりがちな自己評価から抜け出して、高い基準で仕事を進めることができる。
5.実行プロセスを整える
「性善説」「性悪説」をもじって、「性弱説」「性怠惰説」と言ったりするが、人間はそれほど強くない、という前提に立ち、業務が効率的に遂行される仕組みを整えることも有効だ。
何かの業務を始めるときは最低限以下のことを用意して、PDCAサイクルが半ば自動的に回る仕組みを整えておくと、祈って負ける回数が減るだろう。
業務の目的やゴールを明確にする
管理する指標を明確にする
報告帳票を作成する
会議体とアジェンダを設定する
上司が言ったありがたい言葉は、その時はスルーしがちだけど、数年後、十数年後に腹落ちしたりするのが面白い。
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才流を経営しながら考えたことや参考にした本の書評を毎週1本、更新していければと思っています。