Must haveな仕事、Nice to haveな仕事
プロダクト開発の世界で、Must have、Nice to haveという概念がある。
Must have・・・顧客にとってなくてはならないもの
Nice to have・・・顧客にとってあるとうれしいが、なくても困らないもの
と分類され、顧客がお金を払い、使い続けてくれる“Must have”なプロダクトを作ることが重要だと言われる。
この概念は日々の仕事にも拡張できると思ったので、今回はそれについて書いてみたい。
自分にとってのMust haveな仕事とは
世の中にあるプロダクトにはMust haveなもの、Nice to haveなものがあるように、私たちがする仕事にも
Must haveな仕事・・・ステークホルダーにとってなくてはならないもの
Nice to haveな仕事・・・ステークホルダーにとってあるとうれしいが、なくても困らないもの
の2つがあるように思う。
たとえば、株式会社才流(サイル)の代表取締役社長である私なら、価値を提供すべきステークホルダーは株主や顧客、従業員、取引先などであり、
Must haveな仕事・・・ミッションやビジョン、全社戦略、ビジネスモデルなどの立案、会社を成功させること
Nice to haveな仕事・・・営業、プロジェクトに入ること、セミナー登壇、日程調整などの雑務
と分類できる。
Must haveな仕事に挙げた「ミッションやビジョン、全社戦略、ビジネスモデルなどの立案」は会社にとって欠かせない要素で、私が考えなければ他の誰も考えてくれない。私がやらなくてはならないものだ。「会社を成功させること」も自分以上に責任を果たすべき人はいないだろう。
一方、Nice to haveな仕事に挙げた「営業、プロジェクトに入ること、セミナー登壇、日程調整などの雑務」は会社にとって必要でも私以外に適任者がいたり、代替手段がある。私がやらなくても誰も困らない。
もし私がNice to haveな仕事ばかりをしていてはステークホルダーから『Must haveな仕事に集中して成果を出してよ』と言われてしまうだろう。
「会社のことを考えすぎ」という指摘
Must haveな仕事、Nice to haveな仕事で思い出すのは、前職の上司に「会社のことを考えすぎ」と指摘されたことだ。
新卒で入った会社では営業パーソンとして働いていたが、意識が高すぎた私は事業や組織の◯◯が課題だ、もっと◯◯に力を入れた方が良い、◯◯をすると会社は良くなる、などと上司に頻繁に意見していた。
ある時、見かねた上司に言われたのが「会社のことを考えすぎ」という指摘だった。いま振り返ると当時の自分にとっては
Must haveな仕事・・・営業として数字を上げること
Nice to haveな仕事・・・事業や組織の課題を提起すること
だったわけで、Nice to haveな仕事ばかりしてないで『Must haveな仕事に集中して成果を出してよ』というメッセージだったのだろう。
美容室においてMust haveな仕事は“髪を切る”だが、Nice to haveな仕事である“ヘッドマッサージ”だけを提供されても『えっ?!』となるように、数字を上げてない営業パーソンに事業や組織の課題を提起されても『えっ?!』となったのかもしれない。
いま振り返ると恥ずかしい限りだが、上司の指摘を受けてからMust haveな仕事にほとんどの時間を使い、Nice to haveな仕事に逃げないようになった。
Must haveな仕事に取り組むためのコツ
どんな職種や役職であれ、自分にとってのMust haveな仕事、Nice to haveな仕事を意識する価値は大きい。しかし、Must haveな仕事に時間を使いたいと思いつつ、Nice to haveな仕事に時間の大半を使ってしまうのは、自分も含めた多くのビジネスパーソンがやりがちな間違いだ。
プロダクト開発ではMust haveを強く意識している経営者が、自分の仕事ではNice to haveな仕事に時間の大半を割いているケースも度々目にする。ここからはMust haveな仕事に時間を使い、本来出すべき価値に集中するための3つのコツを解説してみたい。
①自分の仕事を書き出す
1つ目のコツは自分が担当している仕事を書き出してみることだ。
このとき、
会社としてMust haveな仕事で、自分がやるべきこと
会社としてMust haveな仕事だが、自分以外の人がやるべきこと
会社としてNice to haveな仕事
の3つにわけて整理すると良い。
3はそもそもやらないようにすべきだし、2は自分以外の人に依頼したり、アウトソースやツール導入などの代替手段で解決できないかを検討する。結果として、手元の仕事は1が大半になるように業務を設計していく。
②Must haveな仕事から取り掛かる
Must haveな仕事、Nice to haveな仕事を分類した後は、日々の業務でMust haveな仕事を進めていくことになる。
このときにおすすめなのは、Must haveな仕事から1日を始めることだ。
多くの場合、Must haveな仕事は深い集中とエネルギーが必要になる。そのため、活力のある午前中にMust haveな仕事に取り組み、活力が落ちてくる午後にNice to haveな仕事を片付けると良い。
逆に、Nice to haveな仕事は浅い集中とエネルギーで処理できる場合が多い。お昼ご飯を食べた後や会議と会議の合間など、どうしても集中力を高めにくい時間帯に取り組むと良いだろう。
③定期的に棚卸しを行う
3つ目はMust haveな仕事、Nice to haveな仕事の分類を定期的に見直すことだ。
日々ビジネスの状況は変化する。最初はMust haveだった仕事が段々とNice to haveな仕事になったり、以前はNice to haveだった仕事が時間が経ってMust haveになったりする。
また、最初は「Must haveな仕事に時間を使おう!」と決めたにも関わらず、日々の仕事に忙殺され、気づいたらNice to haveな仕事ばかりに時間を使ってしまうケースもある。
最低でも1ヶ月に1回程度は、自分の仕事の棚卸しに時間を使えると良いだろう。
以上、プロダクト開発の世界で使われるMust have、Nice to haveの概念を日々の仕事に当てはめてみたが、果たしてこのSubstackはMust haveな仕事なのだろうか。
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才流を経営しながら考えたことや参考にした本の書評を毎週1本、更新していければと思っています。