ノウハウ公開に力を入れている5つの理由
自社のオウンドメディアやTwitterなどで情報発信をしていると「社外にノウハウを公開して大丈夫なんですか?」「競合にパクられたりしませんか?」と心配されることがある。
先日、当社のコンサルティングプロセスを公開した『才流のBtoBマーケティング戦略・施策立案の支援プロセスを全公開~進め方のポイントを解説~』を発信した際もTwitter上で「ここまで出すとは・・」というコメントを複数いただいた。
今回は前職時代も含めて10年以上、ノウハウをばら撒き続けている私が、ノウハウ公開に力を入れている理由を解説する。
結論:メリットが、デメリットを上回るから
最初に結論を書くと、ノウハウを発信することで得られるメリットはたくさんある。例えば、
認知や想起率、好意度の向上
リード数の向上
採用のエントリー数の向上
従業員のスキルアップ
などだ。一方、デメリットはほとんど見当たらない。
よく質問される「ノウハウを真似されて、競合にシェアを取られるのでは?」に関しては、競合にシェアを取られる真因は自社のノウハウを真似されたからではなく、自社の認知や想起が弱いからか、サービスに優位性がないからか、商談時の提案がイマイチだからだろう。
また、「公開されたノウハウをもとに自分たちで取り組む会社が増え、コンサルがいらなくなってしまうのでは?」とも質問されるが、いまどきノウハウは本やWeb記事、セミナーなどで大量に公開されている。当社が出そうと出さまいと、どこかの会社がいずれ出すだろう。であれば、真っ先に自社から出してしまったほうがいい。
先日も「『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』を読んで実践したらリード数がたくさん増えた。ついては、全体戦略から見直したいと思い、才流に依頼したい」という相談をいただいた。ノウハウを出していなければ、こういった機会は訪れなかっただろう。
ビジネスモデルや競合状況にもよるが、多くの人が心配しているほど、ノウハウを公開するデメリットはない。自分自身を振り返っても、他社が発信するノウハウを見て学ぶことはあるが、優れたノウハウほど模倣は難しく、「とても真似できないな・・」、「案件があったらこの会社を紹介しよう」と思うことが多い。
次に、ノウハウ公開を重視している理由を5つほど紹介したい
①ノウハウ蓄積が進む
ノウハウ公開=社内にあるノウハウをそのまま出す、ではなく、ノウハウを公開しようとする過程で新しいノウハウが蓄積される。
まとまった形で社外にノウハウを出すためには社内の知見を集め、整理したり、追加で情報を調べる必要があるからだ。
加えて、最近気づいたのは「ノウハウを出すことは新しいノウハウを引き寄せる」こと。
今年の11月に『新規事業を成功させる PMFの教科書』を出版したが、この本をきっかけにたくさんのセミナー・イベント登壇、取材の依頼をいただいた。
セミナー・イベント登壇、取材では書籍に書いた以上の情報を話す必要があるし、質疑応答で想定していなかった角度から質問をいただくことも多い。これらに応えようとする中で、出版後に新しいノウハウが溜まっているのを感じる。
ノウハウを出すことによって、フィードバックが自然と集まり、新しいノウハウ獲得が促される。
②新しい機会が手に入る
2つ目は、発信がきっかけで新しい機会が手に入ることだ。
情報は、情報を持っている企業や人に集まる。例えば、共催セミナー、イベント登壇、取材、協業の依頼は、情報発信していない企業よりも、情報発信している企業に集まりやすい。
具体例を挙げると、BtoBサイトのベストプラクティスをまとめ、180のチェックリストとワイヤーフレームとして公開した「BtoBサイトを成功に導く180のチェックリスト」。
この記事は大きな反響をいただき、チェックリストとワイヤーフレームをもとにサイト改善・リニューアルをして、コンバージョン数が向上した、という声も多数いただいた。
コンテンツ作成のきっかけは、BtoBサイト制作で有名な株式会社ベイジの代表・枌谷さんと、デジタルマーケ関連のサービスを提供する上場企業、株式会社WACULの代表取締役・垣内さんと、Twitterを通じて出会ったこと。
情報発信をしていなければ、得られなかった機会であり、Twitter最高!となった出来事だった。
③知られていないものは「ない」と同じ
マーケティング×ITの業界に長くいるからか「知られていない商品は存在しないのと同じ」、「Googleでインデックスされていない会社はないのと同じ」という価値観が染みついている。
同様に「社外の人に見えないノウハウは存在しないのと同じ」だと思っている。
Webサイトや商談時に「ノウハウありますよ!」と伝え、本当に社内にノウハウがあったとしても、社外に対して見える化されておらず、知られていなければ、顧客はそれを認識できない。それは存在しないのと同じだろう。
④顧客の不安を解消できる
特に高額無形商材で顕著だが、企業と顧客の間で情報の非対称性が大きい場合、発注前のお客様は
本当にこの会社に任せて大丈夫かな?
どんなアウトプットが出てくるかな?
後になって「これはできません」「それは追加見積もりです」って言われないかな?
などの不安を抱いている。当社の場合、コンサルティングという無形商材ゆえに「どこまでやってくれるんですか?」「具体的になにをやってくれるんですか?」という質問を商談時にいただくことが多い。
そうしたお客様の不安を解消するためにコンサルティングのプロセスやアウトプットを可能な限り見える化し、安心して発注いただけるようにしている。
先日も「プロセスやアウトプットが見える化されているため、安心して発注できる」という声をお客様からいただいた。
ノウハウを出さないことは、自社のメリットになるかもしれないが、顧客のデメリットにもなることを認識しておくべきだろう。
⑤今日死んでも大丈夫になる
最後に完全に個人の感想として「もし今日交通事故にあって天国か地獄に行った場合、せっかく知った面白い情報が自分1人で完結してしまう。それは社会に対して申し訳ない」という気持ちがある。
私が天国に行くのか、地獄に行くのか、私の知った情報が社会にとって価値があるのかは不明だが、役立つ情報があるなら、自分たちだけで留めずに社会に届けた方が良いと思っている。
以上、5つの理由を紹介した。今後も、“メソッドカンパニー”を目指す会社として、蓄積したノウハウを全力で社会・顧客に届けていきたい。
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才流を経営しながら考えたことや参考にした本の書評を毎週1本、更新していければと思っています。