大きな石から先に入れる仕事術
自己啓発の世界で『バケツには小さな石ではなく、大きな石から先に入れなさい。先に小さな石を入れてしまうと大きな石が入る余地がなくなりますよ』という話がある。
時間を“バケツ”に、予定や行動、出来事を“石”に例え、たいして重要ではない予定を先に入れてしまうと、「人間関係」「健康」「家族との時間」「将来の夢」などの本当に重要な予定がバケツに入らなくなり、重要なことを成せずに人生が終わりますよーという指摘だ。
この「バケツには大きな石から先に入れる」話は、仕事でも一緒だなと思ったのでそれを書いておきたい。
仕事における大きな石、小さな石
人生において重要な大きな石(人間関係、健康、家族との時間、将来の夢など)と、重要でない小さな石(ネットサーフィン、ダラダラとテレビを見る、惰眠をむさぼるなど)があるように、仕事においても大きな石(自社や自分にとって重要な仕事)と小さな石(自社や自分にとって重要でない仕事)がある。
例えば、
大きな石・・自社や自分の成果に直結する仕事。経営者の私であれば、ミッションやビジョン、全社戦略、ビジネスモデルなどの立案/浸透など
小さな石・・自社や自分の成果に影響しない仕事。経営者の私であれば、現場への不必要な干渉や日程調整、会食の予約、無駄な会議など
と分類できる。
そして、仕事においても小さな石(自社や自分の成果に影響しない仕事)を先に入れてしまうと、大きな石(自社や自分の成果に直結する仕事)が入らなくなってしまい、重要なことを成せずに業務時間が終わってしまうことがある。
吉田兼好の徒然草第188段に、法師になったときに便利だと思って、乗馬と早歌を習っているうちに肝心の説教を習う暇がなくなり年老いてしまった人の話がある。どう考えても、まずは説教を身につけるべきで、乗馬と早歌は後で着手すべきだが、日々仕事をしていると乗馬と早歌から着手してしまい、説教を身につける暇がなくなってしまうのは意外によくある事態だろう。
なぜ小さな石から先に入れてしまうのか?
ほとんどの人は大きな石(自社や自分の成果に直結する仕事)が重要だと理解している。しかし、業務の中でついつい小さな石(自社や自分の成果に影響しない仕事)に時間を使ってしまうのはなぜなのだろうか?
過去の経験や周囲を観測している中でよく見るのは、
偽りの達成感・・・小さな仕事は着手がしやすく、タスクを終わらせた、という快感を得られる
取り掛かりやすさの罠・・小さな仕事は集中力やエネルギーが必要ないため、PCを開いて真っ先に小さな仕事をしてしまう
エネルギー不足・・大きな仕事をこなすには集中力やエネルギーが必要。寝不足や二日酔いだったり、兼務だったり、他に心配事があったりすると、大きな仕事をこなすエネルギーが足りず、小さな仕事で時間を潰してしまう
認識不足・・大きな仕事の重要性を認識できていない。組織として認識を揃えられていない場合もあるし、個人として認識が不十分な場合もある
セルフ・ハンディキャッピング・・ある種の自己防衛として、大きな仕事と成果に向き合わないための理由づくりをしてしまう(試験前にあえてゲームをしてしまったり、部屋の掃除をしてしまったりなど、あえてハンディキャップをつくりにいく心理現象)
などだ。
上記のどれに該当するかは人や状況によって様々だが、小さな仕事をいくらこなしたところで自分の成果は積み上がらず、作業したという記録のみが積み上がっていくことは共通している。
解決策は、大きな石から先に入れること
仕事において大きな石(自社や自分にとって重要な仕事)をバケツに入れる方法はたった一つ。大きな仕事から優先して取り掛かり、小さな仕事は優先度を下げることだ。
次々と事業を成功させている某上場企業経営者が「新規事業は兼務では難しい。集中しないとうまくいかない」と言っていたが、大きな仕事も「集中しないとうまくいかない」。自分の時間のほとんどを大きな仕事に割く必要がある。
具体的にできる工夫としては
大きな仕事から1日をはじめる
自社や自分にとっての大きな仕事を、紙に書いて目に見えるところに貼っておく
数時間まとまって集中できる大きな仕事Dayを週に何度か作る
仕事を洗い出し、重要でない仕事を断捨離する
などがあるだろう。
そして、小さな仕事を一切やらないわけにもいかないので、小さな仕事をやる際も
17-18時などの終業時間前に締め切り効果を活かして、一気に取り組む
ランチ後の集中力が落ちがちな時間に取り組む
MTGとMTGの合間のすきま時間に取り組む
週に半日~1日程度、小さな仕事Dayを作る
スケジューリングから1日の仕事をはじめる
などの工夫できると良いだろう。
私自身、油断すると小さな仕事を朝から晩までやって、一日が終わってしまうことがある。常に「大きな石から先に入れる」ことを意識して成果を出していきたい。
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才流を経営しながら考えたことや参考にした本の書評を毎週1本、更新していければと思っています。